入江工研株式会社

お問合せ

半導体部品の冷却で液化ヘリウムがボイルオフ・・・冷却効果を高め生産性アップを実現した真空断熱技術とは 半導体製造装置メーカーI社 生産管理部門

課題

寒剤を液化窒素から液化ヘリウムへの変更で結露やボイルオフが発生

電子デバイスや自動車分野での需要拡大に伴い、半導体部品を製造するI社は生産効率の向上が急務だった。そこで部品の冷却方法を見直し、使用する寒剤を-196℃で冷却する液化窒素からさらに低温の-269℃で冷却可能な液化ヘリウムに変更することに。

液化ヘリウムで効率的に冷却すれば、生産性は飛躍的にアップするはずだった。しかし実際に液化ヘリウム冷却に替えて設備を動かしてみると、配管の接合部が結露し、ボイルオフが発生。これではせっかく採用した液化ヘリウムの冷却効果を発揮しきれないばかりか、接合部が腐食して破損してしまう可能性さえ出てきた。液化窒素の時と同様、大気温度の影響を受けないように真空断熱された二重構造の容器・配管を使用していたので、このような事態が生じるとは全く想定していなかった。

容器や配管自体の熱伝導率が悪く、寒剤の効果が薄い・・・

これまで使用していた液化窒素に比べ、液化ヘリウムは大幅にコストが上がるが、I社では十分な費用対効果が得られると見越していた。しかしボイルオフした分を差し引いても、期待したほど冷却効果が出ず、生産性は上がらなかった。さらに検証を続けると、結露・ボイルオフの他に容器や配管自体の熱伝導率が悪く、絶対零度に近い液化ヘリウムの冷却効果を生かせていないもう一つの要因だと分かった。

また、液化ヘリウムに切り替えたことによって温度変化が大きくなったため、継手部分にかかる金属の伸縮による負担も懸念材料となっていた。伸縮を吸収できない継手部分が破損すれば時間とコストが掛かってしまう。加えて、ヘリウムは毒性のない安定したガスだが、液化ヘリウムが一気に漏れ出して蒸発すれば事故につながる恐れもあった。度重なる問題から早急な対応が必要となった。

課題のポイント

  • 液化窒素から液化ヘリウムに切り替えたが生産性が上がらない

  • 容器・配管の真空断熱を行っているのに結露やボイルオフが発生、熱伝導率も悪く、期待した冷却効果が得られない

  • 継手部分に大きな温度変化の負担がかかり破損の危険があった

12